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物心ついた頃からアイドルが好きな人のブログ

ワニの国の使者からの贈り物

音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』再演、東京での千穐楽おめでとうございます。

2年前の私に大きな大きな衝撃を遺していったこの作品に、また逢うことができたことを本当にうれしく思っています。

(…と、書いた時は本当に千穐楽が終わったばかりだったのですが、いつの間にやらこんなに時間が経ってしまっていました。。) 

 

2年前、ものすごい衝撃を受けて、生まれてはじめて"同じ作品を同じキャストで二度観る"ということをしました。演劇においてそんなことをしたのは、今のところ、あとにも先にもこの『コインロッカー・ベイビーズ』だけです。

2年前から、「好きな演劇作品は?」という質問には、迷わず「『コインロッカー・ベイビーズ』です!」と答えてきました。

それほど鮮烈な作品だったのに、というか、だったからこそ、大切にしすぎて、好きだったあれこれを書き留めておかなかったことを本当に後悔していました。いくら大切でも愛していても、哀しいかな、人は忘れていく生き物なのです。。。

だから、今回は2年前の分までここに残しておこうと思います。

 

※ということで、めちゃくちゃネタバレです!!画像から下は本編の内容に触れているので、ネタバレしたくない方は回れ右をお願いします<(_ _)>

 

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2年前のことは、もう事細かには書けそうにありません。でも、私のiPhoneのメモ帳に、『コインロッカー・ベイビーズ』の余韻の渦中にいる私の独り言が残されていたので、ここに記しておこうと思います。

 

この作品は客電が落ちる前に、明るい状態で始まる。
私がこれまで見たことがあった舞台は暗転スタートだったから、この時点でドキドキした。心の準備ができていなかった。
駅らしきざわめきや電車の音と「新宿〜新宿〜」というアナウンスが流れる。
そうかここは新宿なのか。
私が知っている新宿駅がそこに見えてくる。
下手から、真田くん扮する駅員が登場する。ほうきとちりとりを持っていて、駅構内の清掃中らしい。
「暑いな。」
そうか、暑いのか。
どなたかの感想ツイートでもあったが、ここで場内の温度が上がる、気がする。暑い気がしてくる。

 

この時点で、少なくとも私は 赤坂ACTシアターの客席から、物語の中の世界へほとんど入り込んでしまった。
まだ客電も落ちていないのに。客席に入ってきた時と、私の周りの環境は何も変わっていないのに。

 

駅員はタバコの吸い殻を拾い集め、開け放してあったコインロッカーの扉を閉める。そして、上手にはけていく。

 

暗転。

 

「暑いな。」「暑いね。」
キクとハシの声。
私は河合くんと橋本くんの声を知っているから、そうわかったけど、まっさらな状態で見たらわからないだろうなぁ。
コインロッカーに閉じ込められている、生まれたばかりの彼らの声。
舞台の中心から光が放たれる。2人の声の時は二筋だったかな?
そして、そのあと畳み掛けるように、
「あついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあつい」
たくさんの叫び声。助けを求める声。
ふと過ぎったのは、原爆を取り扱ったドラマや映画。同じような声を聞いたことがある気がした。このとき、舞台からは強い光が放たれつづける。


初めて見たとき、泣きそうになった。つらかった。やめてって叫びだしそうだった。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…ってずっと謝っていた。
育てられなくてごめんね、なのか、覚悟もなく産んでごめんね、なのか、捨ててごめんね、なのかわからないけど。
というか、そもそも、私は産んでも捨ててもないのだけれど。

 

音楽。M1『コインロッカー・ベイビーズ
イントロは、パンフでROLLYさんが言っていたように、どこかオペラ座の怪人のテーマを彷彿とさせるもの。
ロックなんだけど、少しクラシカルで、おどろおどろしい感じ。
赤ん坊の格好をした男性ダンサーが出てきて踊る。その後、舞台中央から同じ赤ん坊の格好をしたROLLYさん登場。歌いだす。
「♪見てくれ 俺のこの腕 (こうなるはずだった)」
コーラスが切ない。こうなるはずだった。なれなかったんだね。
「♪ママに パパに 未来に 神様に」
下手側客席に降りる階段を半分降りて、客席を指差して歌う。睨みつける様子が印象的。あぁ2階席でよかったなと思った。あれ目があったら自分を責めまくる。私は別に子どもをコインロッカーに捨てたりしてないけど。
ここの振り付け、覚えちゃった。

 

同じく赤ん坊の格好をした女性ダンサーが登場。シルビアさんが出てきて歌う。
上手で「♪ママに〜」。怒りに任せて歌ってる感じなのに、ハーモニーが綺麗で逆に怖い。

 

赤ん坊たちの苦しみ。
舞台二階部分に、河合くん扮するキク、橋本くん扮するハシ登場。
苦しそう。
赤ん坊ダンサーズが止まる。
「♪音が消えた 鼓動が消えた」
河合くんの「音が」が死ぬほど好き。あぁやっぱり私は河合くんの歌が好きだと思い知らされる。
上手いか下手かではない(下手だと言いたいわけではない)。声がすごく好き。河合くんの歌が耳に残って離れなくなる。

 

河合くんと橋本くんも降りてきて、赤ん坊たちの群舞。
「♪かたく閉ざされた 四角い箱の中 音が遠ざかる 世界が遠ざかる」
「♪すべてを奪ったのは 神様 ううん ママ」

 

後々、コインロッカーに置き去りにされた子どもの多くは死体として見つかり、たった二人、それぞれ横浜と新宿のコインロッカーに置き去りにされた子どもたちだけが生き残ったと説明される。

ちなみに新宿のコインロッカーベイビーを見つけたのは、M1終わりに上手から再び登場する駅員さんである。

 

彼らは生後わずか数時間で死の恐怖に直面した経験と、それに打ち勝った経験をしており、とてつもないエネルギーが体内に渦巻いているから、それを抑制しなければならないという。
そのため、一度母の胎内に戻すことが必要で、それに近い体験として心臓の音を聴かせるという治療(?)が彼らにはなされる。
「彼らに、変わったのは自分たちだと気づかれてはなりません。変わったのは自分たちではない、この世界だとそう思わせることです。」
うーん。この辺の理屈がよくわからなかったなぁ。原作読めばわかるのかな。

 

生き残った二人の赤ん坊は、ハシとキクと名付けられ、和代さんという里親が彼ら二人を引き取った。
あれは中学生の頃の設定だろうか?ハシとキクと和代さんが、デパートの屋上の遊園地に遊びに行くシーンがある。二人はオムライスが好き。返事をハモってしまうハシとキクがかわいい。ハモったことに少しばかり嫌そうな顔をするキクがもっとかわいい。なのに、和代さんに「デパートで食べるのは特別だものね。」って言われたら、またあどけない表情で前のめりになって頷くキクがかわいい。

 

遊園地には、カナエちゃんという一発当たったかどうかも怪しいくらいのアイドルが来ていて、実は昔サーカスにいて催眠術をやっていたと言う。今日はそれをやってくれるらしい。
胡散臭い。胡散臭いにもほどがある。
催眠術にかけて欲しい人はたくさんいたけど、カナエちゃんのデビューシングル名を答えることができたハシが選ばれる。
司会者「念のために聞くけど、君、精神病にかかったことは?」
ハシ「ないよ。」
…嫌な予感しかしない。

 

メモはここで途切れていました。いやー、、我ながら気持ち悪いほどの記憶力。ただただ衝撃を受けて二度観ただけでこの文の量です。

ここから先は、当時の私が何らかの事情で力尽きたというのもあるのでしょうが(笑)、今考えると、もう私の記憶と表現力という筆では書ききれないほどのことが舞台で起こっていたということでもあるのかと思います。

起きていたことなら羅列できます。子どものころの記憶を催眠術で呼び起こされ、ハワイに行き、もっと赤ちゃんのころならどんな感じと聞かれて「あつい、あつい、あついあついあついあつい…」となって、、という感じに。

でも、あのおぞましさとか、確かに悪夢が始まってしまったさまを描き切ることはできそうにもないので、ここで留めておくのがちょうどよかったのではないかと今では思っています。

 

他にも、こんなことを書き残していました。

キクがアネモネを守ってくれたのは出会いの場面だけ。
でもキクはハシを何回も守ろうとしてた。でも守りきれないことの方が多かった。
ハシもキクを守ってくれた。
キクは実はいろんな人に守られているのではないか。知らず知らずのうちに守られている人は、つよい。輝ける。

 

変わったのは世界だ、と、自分たちだと思わせてはならない、というけど、心音だって気づいてからも彼らは世界が変わったと思ってる節がありそう。

このへんに関しては再演を観に行く前に読んで、自分でもそうだったっけ?と疑問に思ったところ。再演を観て答え合わせをしようと思ったところ。

でもきっと、2年前の19歳の自分にしか感じ取れないこと、自分も演劇をやっていた当時ならではの本の読み方、見方等いろいろあったんだろうなぁと思います。

そんなに成長しても、変わってもいないと自分では思っているけれど、日々、それなりの速度で私はどんどん新しく(それが優れていっているのかはさておき)変わっていっているのだとこんなところで気づかされました。

 

当時の私は「アネモネみたいな女の子になりたい」と言っていました。

もちろん、『コインロッカー・ベイビーズ』をきっかけに知って惚れこんだ昆夏美さんという女優さんの影響もかなり大きかったのですが、当時の私は今以上に隠れてヲタクをしていて、「あたしキクが好き。しびれるほど本気。」と大声で言える強くてまっすぐなアネモネが心底うらやましかったというのが大きな理由だったと思います。

今の私は、アネモネになりたいかなぁ...?どうでしょう(笑)

 

2年前の私に衝撃を与えたのはそのストーリーや個性豊かな登場人物やそれを演じるキャストの力量だけでなく、音楽や照明など、舞台を構築するすべての要素でした。生の舞台が人々を魅了する理由を、身をもって初めて知った経験だったのかもしれません。

私の周りには舞台音響や照明をきちんと勉強している、それらに魅了された子たちがいるのですが、彼女たちが音響や照明に惚れ込む理由も、私なりに理解できた経験でもあります。

 

 

さて2年前の話はこのあたりにして、今回の再演の話へと移っていきたいと思います。

 

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 正直、今回の再演が決まったという報せを受けた時、うれしかったのと同時に、2年前あんなに入れこんだ作品と同じであり同じではないという点から観に行くかどうかかなり悩みました。オリジナルへの愛が強すぎて、しかもおそらく記憶が相当美化されていて、新しいキャストでの作品を素直に見られないのではないかという怖さもあって、迷った結果、2年前と同じ、河合キク・橋本ハシ回のみ観ることにしました。

 

結果としては、完全にすべてを空で言えるくらい覚えていたわけではないけれど、歌なら歌いだしを聴けば口ずさめるくらいには覚えていて、そんな自分の記憶力に少し引きながらも(笑)、再演は再演として楽しむことができました。

アネモネ役は山下リオさんになり、アネモネのナンバーの曲調が変わったり、もちろん背格好も違うのでアネモネ像自体が変わっていたけれど、強い目をした凛としたアネモネがとても素敵だったなぁと思います。

ガリバー(ぬいぐるみ)がいなかったのだけが寂しかったですが…(笑)

もちろん、アネモネだけではなくて、MADEの秋山くん・福士くんも今回から参加でしたが、素敵に演じられていましたし、続投のみなさんも初演のいいところはそのままに、パワーアップしたものを見せてくださっていました。

 

 

今回再演を観たことで、きっと私はこの作品の演出・脚本・音楽が全部好きで、もしハシとキクに新たなキャストを迎え、これから先も脈々と受け継がれる演目としてつづいていく未来がきたとしても、そのたびにドキドキしながら観に行って、それぞれの良さを認めていくのではないかと思いました。

演劇の作品のファンになるのははじめてかもしれません。

これからも音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』が語り継がれ、演じられ継がれていく作品であることを祈っています。